迷いなき決断：起業へ

zenschoolでの体験を経て、彼は大きな決断をします。2018年、空飛ぶクルマの開発と事業化を加速するため、株式会社形態のスタートアップを設立。ボランティア活動の枠を超え、本格的な事業として推進するため、そして長年勤めたトヨタ自動車を退職し、経営に専念するためでした。

安定した大企業を離れ、リスクの高いベンチャーを立ち上げる。普通なら大きな不安が伴うはずのこの決断を、彼は「意外とスッキリとスタートしました」と振り返ります。

それは、zenschoolを通じて得た内面的な整合性——自分の「ありのまま」と「やりたいこと」が完全に一致した状態——が、迷いを消し去ったからかもしれません。外部のリスクは変わらなくても、内なる確信が、彼を力強く後押ししたのです。

困難を乗り越え、未来を形に

設立されたスタートアップは、まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」で成長します。

• 資金調達: トヨタグループ等の支援を受け、累計147億円超を調達。

• 開発拠点: 愛知県に大規模な飛行試験場を開設。

• 有人飛行成功: 2020年、日本初の公開有人飛行試験に成功し、世界中から注目を集める。

• 組織成長: 設立当初5名だった従業員は、約2年で60名以上に。

• 業界でのリーダーシップ: 創業者自身も「空の移動革命に向けた官民協議会」の構成員に。

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もちろん、その道のりは平坦ではありませんでした。世界の競合に対する遅れ、技術的な課題、法規制、資金繰り、経験不足…。数えきれないほどの困難に直面しながらも、短期間でこれほどの成果を上げられた背景には、卓越したリーダーシップと組織のレジリエンス（回復力・しなやかさ） がありました。

zenschoolの教えは、どう活かされたのか？

彼は、zenschool参加前後の「圧倒的な違い」を認めています。

• オーセンティックなリーダーシップ: 「ありのままに生きる/リードする」能力が、困難な状況でもブレない軸となった。

• 対話と相互尊重: 異なるチーム（CARTIVATORと新会社）を尊重し合う文化は、zenschoolのコミュニティ原則と響き合う。

• 内発的動機（True Innovation®）: 「最もワクワクする」という情熱が、事業全体の推進力であり続けた。

• マインドフルネスによる強靭さ: 数々の困難を乗り越える冷静さ、集中力、適応力は、マインドフルネスの実践によって培われた可能性がある。

「100年に一度のモビリティ革命」という壮大なビジョン。それを実現するには、長期的な視点と、目の前の課題を着実に実行する力の両方が不可欠です。

zenschoolがもたらした マインドフルネス（「今ここ」への集中と冷静さ） と True Innovation®（内発的動機に基づく持続的な情熱） の組み合わせは、彼に「Patient Urgency（忍耐強い緊急性）」とも呼べる、稀有なマインドセットを与えたのかもしれません。—— 揺るぎない信念（忍耐）と、変化に対応する行動力（緊急性）。これこそが、壮大な挑戦を推進するリーダーに必要な資質だったのです。